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「中国で発見の化石、未知の人類か」

 ナショナル・ジオグラフィック・ニュースの記事から
「中国南部で見つかった石器時代の骨は、未知の人類のものかもしれない。議論を呼んでいる最新研究によると、この人類は突出したアゴと眉弓を持ち、シカの肉を食べ、洞穴に暮らしていたという。
 この「謎の人類化石」は、1万1500年前というごく最近に現生人類と共存していた、まったく新しい種の可能性もあると、中国とオーストラリアの研究チームは主張している。
 あるいはこの化石は、アフリカを出て東アジアへ移り住んだ、現生人類のごく初期のグループかもしれないという。
 またあるいは、彼らの主張に懐疑的な一部研究者に言わせると、化石はわれわれがすでに知っている事実、つまり、人間の姿かたちや大きさは多様であるということを示しているにすぎないのかもしれない。 」
(イラスト:雲南省馬鹿洞人の復元想定図by Peter Schouten、写真:広西チワン族自治区隆林洞穴出土の頭蓋骨by Darren Curnoe。ナショナル・ジオグラフィック・ニュースWebサイトより)

 原著論文は、オンライン学術誌PLos ONE(ダウンロード・フリー)に、3/14付で掲載された、Human Remains from the Pleistocene-Holocene Transition of Southwest China Suggest a Complex Evolutionary History for East Asians(南西中国で発見された更新世-完新世移行期の人類遺体は東アジアにおける人類進化史の複雑さを示唆する). Darren Curnoe, Ji Xueping, Andy I. R. Herries, Bai Kanning, Paul S. C. Taçon, Bao Zhende, David Fink, Zhu Yunsheng, John Hellstrom, Luo Yun, Gerasimos Cassis, Su Bing, Stephen Wroe, Hong Shi, William C. H. Parr, Huang Shengmin, Natalie Rogers (2012) PLoS ONE 7(3): e31918. doi:10.1371/journal.pone.0031918です。筆頭著者はオーストラリア、シドニーにあるニューサウスウェールズ大の研究者、ほかオーストラリアと中国・雲南省の研究者を中心とした共同研究チームのようです。
 研究の対象となったのは、雲南省紅河哈尼(ハニ)族彝(イ)族自治州蒙自県に所在する馬鹿洞(Maludong)の発掘調査で出土した人骨群で、さらに広西壮(チワン)族自治区百色市隆林各(ゲ)族自治県徳峨糸近郊に所在する隆林(Longlin)洞窟から1979年に地質学者によって発見されていた頭骨も検討されたようです。
 研究チームは、これら2地点の化石人骨は同じ人類集団に帰属するものと考えており、現代人には通常見られない特徴があると指摘、これらの化石が、炭化物のAMS年代測定と、鍾乳石のウラン・シリーズ年代測定により、1.43~1.15万年前のものであるとしました。その上で、1)北アフリカ・モロッコのDar-es-SoltaneおよびTémara遺跡や、広西壮(チワン)族自治区崇左市知人洞(Zhirendong)から出土した人骨が示唆するように古代型ホモがより新しい時代まで生き残っていた可能性、または2)現代人の出アフリカは何波もありその中により古い形質を反映した集団がいた可能性を指摘しています。
 この研究は、基本的に化石人骨の形質と年代にもとづくものであり、たとえば「デニソワ人」が脚光を浴びたような古人骨から抽出したDNAにもとづくものではありません。そして化石人類の形質をめぐる議論は、しばしば錯綜します。ナショナル・ジオグラフィック・ニュースに見られる反対論者のコメントが、それを象徴しているようです。
 ちなみに、共同研究グループが類例として指摘した知人洞の人骨は、ナショナル・ジオグラフィック・ニュースで反対意見を述べているエリック・トリンカウスらが、先に「東アジアにおける現代人の最古の例」として報告したものであり(2010年、アメリカ科学アカデミー紀要に掲載の論文)、今回、このような引用をされれば黙っていないのは道理、トリンカウスは、馬鹿洞、隆林洞窟も現代人の変異の幅におさまると反論していますね。ちなみに、知人洞からは下顎骨と歯しか出土していないので、現代人と特定できるのかどうかと言う反論が出されていたようです。
 ここはやはり、DNAの抽出に成功しない限り、議論が並行線をたどるような気がします...
 あえて研究チームの主張に沿ってみると、中国南部から東南アジアにかけて、後期旧石器時代相当の年代になっても、「原始的」に見える礫器が続くこと、それらの遺跡はたいがい山間部の洞窟で発見されていることと関連しているかのように考えられます。また、その年代は明らかに完新世に入っており、中国南部における最古の土器の年代よりも新しい...新石器時代の胎動を迎えた現代型人類と、古代型の人類が並存していたのか...などと想像力を掻きたてられますが...
 共伴する石器や、洞窟内における生活の痕跡などについて詳しく調べる前に、先走りは禁物ですね。

 いずれにしても、今後の研究と議論の展開には要注目です。
by asiansophia | 2012-03-19 20:00 | 旧石器考古学/Palaeolithic