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ネアンデルタールと現代人・続く発見と論争/ Neanderthal and Modern Human: revision and controversy

 人類の進化、現代人の起源については、毎年のように新発見、新学説が現れて、教科書や概説書はあっという間に改訂が必要になるような状況です。変化がめまぐるしいので、学校の授業などでどのように教わったのかで世代が分かるほどでしょう。
 ちなみに40代以上の方は、基本的には猿人~原人~旧人~新人と段階を追って進化していったという単純な説明をされていたかと思います。その後、とくに化石人骨からDNAを抽出する技術の確立と研究の進展にともない、現代人はアフリカで出現して世界各地に広がったとされる一方、ヨーロッパのネアンデルタール人など、かつての「旧人」のほとんどは子孫を残すことなく絶滅した、というストーリーに置き換えられました。1990年代のことです。
 ところが昨年(2010年)、ネアンデルタール人骨から抽出されたDNAの全塩基配列が解読され、現代人との比較が進められると、ユーラシアの現代人には、サハラ以南のアフリカ人と異なりネアンデルタール人などに由来する遺伝子が含まれている-つまりネアンデルタール人と現代人の一部には何らかのつながりがあった、ということが主張されるようになりました(Science2010年5月7日号掲載の論文:英語版全文PDF版はこちら)。
 さて、以上はおもに遺伝人類学の研究にもとづく議論ですが、化石人骨や考古資料はどうなのでしょうか?
 ヨーロッパでは、最古の現代人と最後のネアンデルタール人の化石の年代が数千年にわたってオーバーラップすることから、双方が隣接して、あるいは入り混じって暮らしていた可能性が指摘されてきました。そして気候変動や現代人の人口増加などによって、ネアンデルタール人は最終的にイベリア半島に追い詰められるように分布範囲を狭め、およそ2万9千年前頃には絶滅してしまったのだろう、というストーリーです。
 その中で、南西フランスのシャテルペロニアン(Châtelperronian)や、イタリアのウルツィアン(Ulluzian)といった石器群は、石刃技法と背付き石器、装身具(骨・牙・貝製)などをもつことから現代人的な様相を示すものの、ネアンデルタール人骨と共伴することが注目されていました。年代的にも4万~3万年前頃と、ヨーロッパにおける現代人の出現と重なるために、ネアンデルタール人が現代人と交流するか、あるいは模倣した結果なのではないか、などと考えられたりもしたわけです。そしてここにきて、遺伝人類学から見て現代人とネアンデルタール人との間につながりがある、遺伝子の交流(=つまり通婚・配偶の可能性)があるという説が打ち出されたので、こうした過渡的あるいは中間的(?)な石器群の解釈も容易になったのかな、と思いきや、実はシャテルペロニアンとネアンデルタール人との関係は、遺跡の出土状態の見直しなどにより疑問視されるようになっていたり、そして今回、ウルツィアンについてもネアンデルタールではなく現代人の所産であるとされたり??? まだまだ、シンプルなストーリーで解決を図れる段階ではないようです。
(写真はNature誌よりのリンク)
 
 ということでだいぶ前置きが長くなりましたが、Nature誌の11月2日号に掲載された論文、「ヨーロッパにおける初期の現代人の拡散とネアンデルタール人の行動への影響」Early dispersal of modern humans in Europe and implications for Neanderthal behaviour,Benazzi et al.(2011), Nature, doi:10.1038/nature10617 (2,Nov,2011, online)です。
 この論文では、ウルツィアン=ネアンデルタール説の根拠となっていたイタリア南部(最南端)カヴァッロ洞窟(Grotta del Cavallo)から出土した人骨(臼歯)を再検討し、それがネアンデルタールではなく現代人のものであることを指摘しました。また臼歯と共伴した貝製のビーズについてのAMS年代は、~45,000から43,00calBPを示すということです。したがって、カヴァッロ洞窟のウルツィアン石器群は、ヨーロッパにおける最古の現代人による所産ということになる、と。
(カヴァッロ洞窟のウルツィアン石器群と共伴遺物:Past Horizonsの記事より

 さて、そうなると、現代人が版図を広げる中、ネアンデルタール人の行動も変化し、過渡的ないし中間的な石器群が生み出されたのではないかと言うこれまでの考え方は再考を迫られるわけです。一方で、遺伝人類学では、現代人がアフリカで出現し、その地を旅立った後、つまりユーラシア大陸に到達した後で、ネアンデルタール人と何らかの交流を持っていた可能性が指摘されているわけで?????
 ということで、人類の進化、現代人の起源については、ますます混迷の度合いが深まりつつあるというか、あるいはこれまでの考え方の一部修正では済まない、大幅な学説の変更が必要になるのではないか、という状況のようです。

 なお、アジアにおける現代人の出現・拡散をめぐる問題は、11/26~12/1の間、国立科学博物館で開催されるシンポジウムのテーマです。この問題に興味がある方は、ぜひシンポジウムにご注目ください。

・Nature誌の論文はこちら(英語版・要旨のみフリー閲覧可)
・Past Horizons: adventures in archaeologyにおける解説記事はこちら(英語)
・国立科学博物館におけるシンポジウム「旧石器時代のアジアにおける現代人的行動の出現と多様性」および第4回アジア旧石器協会(APA)日本大会についてはこちら
by asiansophia | 2011-11-14 06:00 | 旧石器考古学/Palaeolithic