人気ブログランキング |


S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

カテゴリ

PJAM2012
3.11 Earthquake
Archaeology(English)
India2011
日々のできごと/ Daily life
アジア/ Asia
おでかけ/ Japan
南アジア考古学/SA Arch.
野川・多摩川/RegionalStudy
旧石器考古学/Palaeolithic
砂川・武蔵野台地北部
考古学(ジオ)
考古学(いろいろ)
雑記

最新の記事

ブログ移転のご案内
at 2012-08-15 01:41
PJAM2012#19 ハイ..
at 2012-04-07 20:00
PJAM2012#18 ヴィ..
at 2012-04-06 20:00
PJAM2012#17 砂漠..
at 2012-04-05 20:00
PJAM2012#16 フェ..
at 2012-04-04 20:00

最新のトラックバック

石器文化研究会 シンポジウム
from 黒く光る石と黒く動く虫

以前の記事

2012年 08月
2012年 04月
2012年 03月
more...

ライフログ



Ninja analyse

その他のジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧

「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化とは何か」予告編(Part4)

 本日、シンポジウムの発表者・コメンテーター、および研究会幹事のみなさまに、予稿集PDFをお送りしました。ようやく全貌が見えてきたところです。遊びの記事ばかりでなく、こちらにも本腰を入れなければ!
 というわけで、気づけば前回Part3から早くも1週間過ぎています。そしてシンポジウム当日まで、あと2週間を切ってしまいました!! そこでJunkuwaさんのブログ記事に答えるかたちで、日本列島の外側からもう一度「ナイフ形石器」を見てみましょう。「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化とは何か」予告編(Part4)_a0186568_1501858.jpg
 昨年8月に石器文化研究会第247回例会(於・法政大学史学科共同研究室(3)考古)で発表した時のネタです。
 まずは西アジアの前期・中期旧石器時代。レバノン、Abri Zumoffen(アブリ・ズモッフェン)の、およそ30~25万年前とされるAmudian(アムッディアン)石器群のBacked Knifeです(1・6)。とくに6は、しっかりとした「一側縁加工のナイフ形石器」と呼びたくなりますね。
(出典:Copeland(2000)Yaburudian and related industries: the state of research in 1996. In A.Ronen&M.Weinstein-Evron eds. Toward Modern Humans: the Yaburudian and Micoquian 400-50k-years ago. BAR Interanational Series850, pp.97-117: fig.6)
(余談ですが、出典論文の著者、Loraine Copelandは、ポリスのドラマーStewart Copelandのお母さんだそうです。って、本当に関係ない話ですね...)



「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化とは何か」予告編(Part4)_a0186568_2115795.jpg 続いて、南アフリカ、Nelson Bay Cave(ネルソン・ベイ洞くつ)の中期石器時代(MSA:中段、12~5万年前)、後期石器時代(LSA:上段、2~1.8万年前)のCresents(半月形石器)です。こちらは、日本列島の「ナイフ形石器」とはあまり似ていませんが、それまで晩期旧石器時代~中石器時代に特徴的とされてきた半月形石器が、中期旧石器時代相当からあったということで衝撃を与えた資料です。
(出典:Klein(1984)Southern Africa before the Iron Age. In R.S.Corruccini&R.L.Ciochon eds. Integrative Paths to the Past: palaeoanthropological advances in Honor of F.Clark Howell. Prentice Hall, U.S.A.,pp.471-519: fig.23)
 なお最近では、同じく南アフリカ、Sibudu Cave(シブドゥ洞くつ)の6.4万年前の資料について、衝撃剥離痕や装着痕とされる樹脂付着物などから矢じりとして使用されていたのではないかとの見解が示されています。Lombard&Phillipson2010Indications of bow and stone-tipped arrow use 64 000 years ago in KwaZulu-Natal, South Africa. Antiquity, vol.84:pp.635-648:Abstractのみフリーアクセス
 ヨーロッパ・西アジア・南アジアの後期旧石器時代のBacked Blade、Backed Bladeletは割愛。言わずもがな、多数の資料があります。一側縁加工、二側縁加工、基部加工、幾何形細石器など。
「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化とは何か」予告編(Part4)_a0186568_236117.jpg
 こちらはポルトガルの晩期旧石器時代(晩氷期~完新世初頭)の資料。下4点は一側縁ないし二側縁加工の小型「ナイフ形石器」と類似します。掲示した図以外に、もっと「茂呂型」に似た資料を含む文化層もあります(後で取り込みなおして追加しましょう)。Abrigo Grande das Bocas(ボカス岩陰)の資料です。
 (出典:Bicho2007Core-tool technology in the Portuguese Tardiglacial and Early Holocene. In S.P.McPherron ed. Tools versus Cores: alternative approaches to stone tool analysis. Cambridge Scholars Publishing, U.K., pp.164-177:fig.9-2)
「ナイフ形石器・ナイフ形石器文化とは何か」予告編(Part4)_a0186568_252888.jpg



 最後は、インドネシア、スラウェシ島Ulu Leang(ウル・レアン)のToalian(トアリアン)石器群、完新世前期8,000BPです。石鏃様のMaros point(a・b)と背部加工された小型剥片石器(またはBacked bladelet)が共伴しています?! トアリアンは、日本における研究史の初期に、J.Maringerによって岩宿II石器群と対比され、山内清男・佐藤達夫らはナイフ形石器全般と対比、いずれも無土器新石器時代説の根拠としました。
 (出典:Bellwood(1987)The prehistory of Island Southeast Asia: a ,ultidisciplinary review of recent research. Jounal of World Prehistory, vol.1 research. Jounal of World Prehistory, vol.1. pp.171-221:fig.9)
 さて今日、日本列島の「ナイフ形石器」は、第四紀層序および放射年代から後期更新世後半、MIS-3後半~MIS-2に位置づけられるため、今回図を掲示した資料とは直接的には関係ない、と言うことができます。しかし一方でそれは、石器の技術形態あるいは形式学から導き出された結論ではありません。石器研究とは別の、独立した層序学、年代測定のデータを外挿することで説明されているのです。
 研究史の初期における、1)「ナイフ形石器」=Backed Blade、ヨーロッパの後期旧石器時代前半と対比し得る型式という説と、2)=幾何形細石器、東南アジアの無土器新石器時代と対比し得る型式という説の対峙は、まさしく、石器の技術形態あるいは型式学の限界を示していると言えます。石刃または剥片を素材とし、その縁辺の一部を残しつつ尖頭形に仕上げるという打製石器作りは、必然的に類似した工程・加工・形態への収斂を導くのです。打製石器製作は、材料の物性(可塑性の低さ)、加工方法の物理的特性(瞬間的な加撃のコントロールの難しさ、および一方向的に材料を減衰させる不可逆的な過程)に強く規定されるため、作り出される形態は文化的にコード化・特殊化される側面よりも、技術的・機能的に共通する側面の方が大きいと言えるでしょう。
 このため、剥片ないしは石刃の一端に鋭い縁辺を残し、刃潰し加工により全体の形状を整え、尖頭部を作り出す(尖頭部の作り出しを規定しない場合も多いが)石器という定義では、後期旧石器時代という時代性や、日本列島という地域性を絞り込むことは、本来できないのです。
 これまでは、そうした認識はないままに、日本列島(実際には北海道や伊豆・小笠原諸島、南西諸島を除く)という枠組みを前提として対象を絞っていたために、「日本列島に固有の」とか「特徴的な」という言説が表わされていたのです。しかし今、剥片尖頭器だけでなく、韓半島や中国大陸北西部などとのかかわりをあらためて見直そうとするときに、「ナイフ形石器」という用語・概念はきわめて不確かなものとなって行きます。
 さて、みなさんはどのように考えますか?
by asiansophia | 2011-01-12 03:16 | 旧石器考古学/Palaeolithic