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エジプトで起きていること(起こったこと)

 先月末以来、エジプトが大変なことになってますね。
 日本の新聞、ニュースでは、そろそろ扱いが小さくなり始めてますが(まだ終わってないのに!)、CNNなんかはもう1週間以上、ずっと、ひっきりなしに映像を流し続けてますね。
 そんな中で、カイロの考古博物館が略奪に遭いそうになったとか、地元の人びとが団結してそれを防いだとか、というニュースも聞こえてきました。
 さらにネットで検索すると、カルナック神殿とか、アビュドスとかでも略奪が起こりそうになったというような伝聞記事が散見されます。
 どこの国にもよからぬ輩がいるものだ、ということにとどまらず、もう少しその背景を考えてみましょう。




 まず、考古資料あるいは古美術品を略奪しようとする動機としては、それが金になるから、というのがまず第一でしょう。
 それはつまり、略奪品を換金できる市場がある、ということを意味します。
 そしてそれは、エジプト一国内にとどまるものではないでしょう。イラク、アフガニスタンetc. すべてにおいて、状況は同じだと思われます。
 以前、パキスタン滞在中に、ペシャワール空港でUAE行きの航空貨物から大量の密輸古美術品が押収されたという記事が一面トップで出ていました。真偽のほどは定かでありませんが、その行き先(買い手?)の一つに日本が含まれていた、ということです。
 略奪者に咎がない、とは言いませんが、買い手がなく換金できる市場がなければ、そもそもリスクを犯して略奪しよう、という気も起こらないですよね。となると、根本的な原因は、どこにあるのか?

 そしてもう一つ、金が動機ではない、略奪・破壊行為。
 前記事でも若干触れましたが、アフガニスタン・バーミヤンでの大仏破壊は、タリバンという組織、イスラム原理主義という宗教思想と強く結びついたできごとと理解されがちです。
 確かに、歴史上、廃仏毀釈、イコノクラスムといったことは、世界中でくり返し起きています。
 しかし現代社会において注意しなければならないのは、考古資料や古美術品、遺跡・文化遺産などへの暴力・破壊行為が、必ずしも宗教思想にもとづくものばかりではないのではないか、ということです。
 はっきり言えば、考古資料や古美術品、遺跡・文化遺産などは、それが所在する土地、そこに暮らす人びとのためのものとして意識・認識されているのではなく、観光や余暇などを通じて、先進諸国や、一部の金持ち・特権階層と結びついているものとして意識・認識されているのではないか、ということです。
 よって、それにまつわる利益・権益と直接結びついていない人びとにとっては、憎悪の対象に置き換わりかねないのではないか、ということが危惧されます。
 そしてその時、物言わぬただの「もの」に過ぎない考古資料や古美術品、遺跡・文化遺産などは、そこにつながる人びとを直接のターゲットにするよりは、より容易に憎悪をぶつけやすい、主義主張を表明しやすい、ソフトなターゲットとして認識されるのではないか、と思われるのです。

 政治的社会的混乱に付随して生じる略奪・破壊行為について、それが起こった・起こした社会や集団を非難し指弾するだけでは、事態はまったく解決しないでしょう。
 おそらく、またどこかで同じことが起こるだけです。
 そしてそれはくり返されるでしょう。

 「人類共通の財産」という標語を文字通りに受け入れられる、受け止められる人びとがどの程度いるのか? それは世界人口の中で多数派となっているのか? もしそうでないのだとすれば、どのようにして理解を広げることができるのか?

 大きすぎる、大げさな話しのようではありますが、案外、国内における「埋蔵文化財」の取り扱い、それへの意識だって似たようなものだと思いますよ...あくまで、個人的な感想ですが
by asiansophia | 2011-02-08 00:12 | 考古学(いろいろ)